SPACE PIRATE CAPTAIN HERLOCK OUTSIDE LEGEND ~The endless odyssey~
のとりとめない感想を一話ごとに。ネタバレしかありませんので未視聴の方はご注意を。

タイトルが長いので、うちのブログではこのアニメ作品を「外伝」と呼ぶことにしています。
【1話】 はきだめのブルース
~あらすじ~
地球を遠く離れた植民惑星、「はきだめの星」。
すでにハーロックは伝説として語られ、かつての仲間たちも散り散りになっていた。
その星に暮らし、何の目的も持てず荒んだ日々を送る少年、台羽正。ある日自宅に戻った彼を待っていたのは、父の死だった。唖然とする正の前に現れたヌーと名乗る4人の死人は、正を殺そうとする。その時、彼を救ったのは、死んだと噂されていたハーロックだった。突然の出来事に混乱する正。
ハーロックは「真の漢になりたければ、俺の艦に乗れ。」そう言い残し、去って行く…。~感想メモ~
ハーロックの登場時間は短いものの、渾身のかっこよさ。おちぶれた海賊たちの思い出の中、夕陽に向かって歩くハーロックの後ろ姿など、思わず目頭が熱くなりそうなロマンと哀愁に満ちていました。逆光の海賊と共に飛ぶのは鋭角船首の旧型アルカディア。旧作ファンの心臓を的確に撃ちぬいてくるアニメだなぁ。作画きれいと言っていたけれど、あらためて見返すと丁寧さが半端じゃないです。
バーあるかでぃあにて、初めてちゃんと表情が描かれるハーロックは笑みを浮かべている。冒頭から蛍と彼女の一味が捕縛され、得体の知れない人外の敵が降って湧いて、台羽博士は殺されると言うハードな展開ではあれど、このハーロックの笑顔だけで安心していまいました。この圧倒的な存在感と信頼感は他の誰のハーロックでも難しい、りんたろう監督のものですね……。
あと、ミーくんすごくかわいい。ミーくんをなでるハーロックの手がたまらん。
【2話】 誰がために友は眠る
~あらすじ~
キャプテンハーロック現わる!
その事実を知り、ハーロックを追い詰めようと現地警察や宇宙保安局が動き出す。
しかしハーロックは、己に向けられた無数の銃口を一撃で黙らせ、髑髏の旗を背に高らかに宣言する。
「俺はこの旗の下に生きる、この自由の旗の下に。」
だが時を同じくして、ヌーたちは台場博士から奪った謎の石版で密度行列砲を完成させ、地球を消滅させてしまう。~感想メモ~
地球連邦首相と思しきオエライさんの指示でハーロック逮捕に乗り出す宇宙保安局長官・イリタ。今回のライバルですね。ルパンでいう銭型ポジション。それにしても、しおらしい若本ボイスの違和感よw このイリタ長官は、首相に頭の上がらない旧アニメの切田とは違い、「宇宙に秩序を」という強い信念のもとに、手段を選ばず強力な行動力を見せる長官。連邦政府などお飾りに過ぎないと思ってそう。
このあたりで登場するミーメさん。
旧アニメ版から声優さんは変わったのですが、これがまたかわいい///
私にとっては、懐かしのセーラームーンのほたるちゃんの声のひと。艶っぽさと神秘性が合わさったやわらかな声質の方ですね。声もビジュアルも、旧アニメから変わってはいるのですが、見慣れて聞き慣れさえすれば違和感はおどろくほど少ない。声優さんも、旧アニメに寄せた演技をしてくれてるのかなぁ。この2話だけの登場ですが、黒髪紫眼の波野静香も印象的でした。
がれきの星がお気に入りのトチロー……超古代文明の遺跡はトチローが興味を抱くものがたくさんありそうですね。「この汚さがおちつくんだ♪ 昔の俺の部屋を思い出すじゃないか」と上機嫌なトチローの顔が浮かびます。
この遺跡に埋まった船内で、今作の世界観とトチローの死の経緯が語られます。
トチローってば作品ごとに死に方もハーロックとの出会い方も違うからほんと二次創作泣かせよな……。
ハロ「人類が怠惰と享楽に溺れていた頃、宇宙に飛び出したのはごく一部の無法者だけだった。そんな俺たちを、連中ははかない夢を追う者とあざけ笑った。だが、俺の友はそんな地球に最後まで夢と希望を持ち続け、未来のために身を粉にして働いた。友の夢は半ばについえた。いったい誰のために、あいつは逝ってしまったのか……」
Dr.「その後人間どもはようやく宇宙に広がったが。政治の中心にいる者どもはいつも醜い権威主義者ばかりじゃ」
ミーメ「ハーロック、コノゴロ地球ヲ見ルコトガ、多クナッタ」
と、いうここの映像ではトチローの墓はヘビーメルダーっぽいのですよ。旧アニメでは宇宙葬で墓石だけが地球に、だったかな。また、死の経緯も「地球の未来のため」と伺える。今作に娘まゆは登場しない。ハーロックが地球を守る理由は、ひとえに「友との約束」のため。これを見ると、旧アニメはいったん忘れて、「原作の10年後」と理解した方がいいのかもしれません。この後のはなしでマゾーンについてチラっと触れる台詞もあるのですが、アニメのエンディングとはまた違う、「原作で描かれなかった決着」を経てこの外伝の時代があるのかも。
地球の危機を察知して唸りを上げて起動する中枢大コンピューター。
船尾楼甲板の風の中にたたずみ、ハーロックは呟く。「友よ、なにを泣く……」と。
うわぁ、めちゃくちゃ渋いな……!
【3話】 はるかなるヌーの呼び声
~あらすじ~
父の仇を討つため、アルカディア号に乗る決心をする正。
艦のある瓦礫の森に向かうが、ハーロックを探している内に迷い込んだ森の地下で、ヌーの眷族に襲われる。正を救ったのは、またしてもハーロックだった。
「自分自身の意思でこの艦に乗る」と言う正を、黙って迎え入れるハーロック。
夜空に髑髏の旗をはためかせて、ついに再びアルカディア号がその全貌を現す!~感想~
おい、地球消えたぞ、地球!
という始まりから。あいかわらず趣のあるアルカディア号の船尾楼を堪能しつつ、台羽くんへ。
台羽くんは、アルカディア号に乗る決心をする。……しかし、お父さんの死体のあつかいが雑だったなー。死体と同じ部屋で寝かされる女の子がかわいそうじゃないかw (このあたりで気づいてくるのですが、この可愛いオリキャラ女子、思った以上に活躍しない! 画面に色を添える程度の存在でした。)
アルカディア号に乗ったものの、キャプテンは留守。迷うほど広い艦内には異星の女と飲んだくれのドクターしかいない。得体が知れないにもほどがある。一方、古代文明の遺跡の主に呼ばれて会いに行ったハーロックは……って、どうしても王蟲と交感するナウシカが思い浮かんでしまったシーンでした。ハーロックちょっとそういう超常現象に対応しちゃうとこあるよね。
そこで明かされる、今作の敵、ヌーの正体。
「ヌーとは恐怖そのもの。宇宙の根源からの支配者。」
「封じられたイエダールの門の向こう側から、宇宙を呪い続けている存在。」
ヌーの正体を聞いた上で、まだアルカディア号に乗る意志があるか、ハーロックは台羽に問いかける。
「それは自分の意志か?」
「この船に乗ってどこへ行く?」
「おまえはその言葉を誰に誓う?」
問いかけも、台羽の答えも、すべて背中で受け止めるハーロック。
そして、
「部屋は空いている。好きに使え」
と言葉少なに台羽の乗船を認める。いやー、この何考えてるのかわからないのにこの説得力。
ハーロックの意図が読めずに焦れる台羽に対して、視聴者はにやにやしながら見てしまう。
艦長が舵輪の前に立てば、アルカディア号の中枢コンピューターが動き出す。
この呼吸。「行こうか、友よ」「おうよ。じゃあまたな、遺跡のねーちゃん!」なんていうふたりの会話が聞こえてきそう。
低く都市のビルを舐めて飛び立つ巨大戦艦アルカディア。飛び立つアルカディアには、独特の切なさがありますね……。
ダイバー0で強く感じたのですが、「飛び立って行くアルカディア」には地上から見上げる者の狂おしい憧憬が込められている。乗りたくても乗れなかった自由と希望の艦、手を伸ばしても届かない理想郷。己の信念のままに、自由に行動する男への、恋のような思慕と胸をかき乱す惜別。それは、ホームから見送る銀河鉄道にも通じる、遠ざかってゆく美しい輝かしいものへの悲しみ、なのでしょう。ハーロックというキャラに強烈な魅力があるのと同じく、アルカディア号にも圧倒的な心揺さぶる魅力があります。それは、ハーロックを主人公とする宇宙海賊シリーズよりも、むしろ、アルカディア号を見上げる少年の眼で描かれる銀河鉄道シリーズのほうがよく描かれていました。いま、ハーロックものを映像化するならば、同じ理由でダイバー0がいいんじゃないかなぁ、と思うのです。話がそれまくりましたね。いや、それだけいいシーンだったんです。外伝のアルカディア号は情緒があってかっこいいんですよ。
【4話】 ヤッタラン・30秒の賭け
~あらすじ~
囚われの身となった元アルカディア号乗組員の死刑が決定した。
宇宙保安局は、有紀螢やヤッタランたちを囮にしてハーロック一派の殱滅を狙っているのだ。
その報道が罠だと知りつつも、アルカディア号は螢たちのいる監獄惑星を目指す。
監獄惑星の対戦艦光子砲をギリギリで回避するも、仲間を人質にとられたアルカディア号は反撃できない。
螢たちを狙う狙撃手の銃口が一斉に火を噴こうとしたとき、ハーロックはヤッタランが作り出した一瞬の隙を利用し、アルカディア号で処刑場に突入する!~感想~
あ、旧アニメ版第一話でハーロックの公開処刑が行われたのと同じようなセットじゃないですかこれーw
などと、古いファン心をくすぐりつつ。本格的に仲間が集合していく展開はワクワクしますね。
ミーメとアルカディア号が監獄衛星の見取り図を解析しちゃう。ハーロック=アルカディア号=ミーメの関係に新しい機能がまたひとつ……。異星人だから超能力でどうの、というよりもミーメはある意味アルカディア号の一部に見えるくらいの描写。読み切りデスシャドーの、船の心でありハーロックの恋人であった「彼女」を思い出しました。船の心の設定はトチロー、ハーロックに命を捧げて生きる女の部分はミーメに託された、あの彼女。アルカディア号とミーメは、どこかで通じる遺伝子がある気がします。帆船につきものの、船首像の乙女めいたイメージも。
で、囚われているヤッタランをはじめとした40人も栄光のアルカディア号クルーである。
とにかくヤッタランかっこいいぞ!さすが俺たちの副長~!
外伝は非常事態ばっかりなので、ヤッタランがよく働くのですw
そして、監獄要塞にラムでつっこむ、アルカディア号の登場……っっ!このド迫力!!!
「30秒かせいだらキャプテンがなんとかしてくれる」に対して「ヤッタラン副長がなんとかしてくれると思っていた」で強硬したと。こいつらまったく!そしてクルーを迎えるキャプテンの微笑み!1話もでしたが、ハーロックの微笑で終わるとすごい安心感です。
【5話】 戦場は墓標の星に
~あらすじ~
5年前事故に遭って遭難した宇宙遺跡調査隊の調査船、ファタ・モルガーナ号がヌーと共に再び姿を現した。
宇宙保安局の大艦隊は、地球を消滅させたヌーとファタ・モルガーナ号の殲滅を試みる。しかし、逆にヌーの恐怖に狂った保安局員たちは同士討ちを始め、艦隊は全滅してしまう。一方のファタ・モルガーナ号は、この戦火の中でも無傷だった。
戦場を目指すアルカディア号と、待ち受けるファタ・モルガーナ号。
あと数時間で2艦は対峙しようとしていた…。~感想~
アルカディア号がにぎやかになって嬉しい5話。
廊下でくつろぐクルーの姿に懐かしさがこみ上げ……あ、大山昇太がサルマタケ鍋食ってたw 安定の異様なサルマタ率www
だらしないクルーの姿を見て、「なんなんだこいつら」と呆れる台羽くんは原作からお馴染み。けど、まぁこの時は脱獄したてなんだから、ハメ外して好きなもん食ってもいいじゃないか。結局これが平常運転ではあるけれどもw
今作では蛍がとってもお姐さんですね。旧アニメ版から10年?くらいですもんね。
美人なお姐さんにかまわれて照れてしまう台羽くんがほほえましい。というか、78年版はどうしてこういうラブコメ要素ほとんどなくなってしまったんだろうか……。ローラに惑わされる台羽くんを心配するあたりで立った台羽×蛍フラグはどこへ行ってしまったんだろうか。
適当な人間を操ってアルカディア号のデータを調べさせるヌー。
「ただの無法者ではないか」「死んだこの親友の幻影から逃れられぬだけの男」とハーロックを解釈するヌーたち。
ここ、不覚にも萌えてしまった。そんな客観的なデータからさえ、トチローへの思い入れバレるのかハーロックさん……!w
さて、ヌーと相対するのは地球保安局イリタ長官。
ここで、ちらりと映った記念碑からイリタの父が死んだのが3059年とわかるんですね。原作.旧アニメが2977~79年の出来事なので、100年くらい時の輪がズレているらしい。
ヌーを異星人と認識して、攻撃命令を下すイリタ長官。しかし、ヌーの精神攻撃の前に、地球の精鋭軍はあっけなく崩壊する。旗艦の部下たちまで恐怖にとり憑かれて同士討ちに倒れるのを目にして、初めて余裕を失うイリタ。ここらへんから、ただの切れ者の軍人というだけではないイリタ長官のキャラが深みを増してゆく。
外伝オリジナルキャラクターのイリタさんは、生まれ育った環境によって「ハーロックになれなかった男」として描かれているようです。旧アニメの切田長官と馬の首星雲で死んだ山中艦長を足したような印象かな。違う形で出会ったら、ハーロックが戦友と呼んでいたかもしれない、そんな男。
【6話】 追憶の髑髏はやさしく嗤う
~あらすじ~
アルカディア号艦内に、突如ヌーが出現した。
ヌーは宇宙保安局員たち同様、ハーロックたちをも恐怖で服従させようと乗組員達を襲う。試練にさらされる正や螢たち!
一方、艦隊の同士討ちで傷を負ったイリタは、たった独りでアルカディア号に執念の突撃を敢行する…。~感想メモ~
「居場所など俺にもない。この宇宙のどこにもな」と、ハーロックは語る。
そんなこと言われると、「俺の隣でいいではないか」ってトチローに言ってもらいたくなりますね……。
・艦内にて
蛍「艦長がお呼びです」
ヤッタラン「ワイは忙しいねん」
ハーロック「そうか…困ったな……(´・ω・`)」
このやりとりを渋い外伝ハーロックで見ると愛おしさが倍増でしたwww
トチロー以外でハーロックにこんな顔させるのはヤッタランくらいですよ。さすが俺たちの副長。
・艦隊戦
アルカディア号ってめちゃくちゃ頑丈ですよね……地球の一般的な宇宙船搭載の武器程度ではびくともしない。
ハーロックのメンタルと比例して頑丈になっているのかもしれないと疑っています。
ヌーのレニ博士の精神攻撃って、誰に対しても苦痛と死の恐怖なんですよねー。ハーロックやアルカディア号の情報も、人間を脅して調べさせないとわからないようだったし、人間の記憶や心理が読み取れるほど器用なわけじゃないのか。要するにワンパターンですわよ女史。
そんな安っぽい精神攻撃に揺らぐようなハーロックではない。
「この艦の名はアルカディア」「ここには恐怖に屈する者はひとりもいない」
ふわーい!かっけー!優秀なクルーがそろっているのも確かだろうけど、アルカディア号とハーロックがいるからこそ何ものも恐れないのだよ。信念と希望を信じさせてくれる、そういう男だ。そういう艦だ。
(あ、でも新入り台羽くんのメンタルはまだあやういw)
ハーロックに恐怖を与えることができず、うろたえるヌー。
「誰だ?おまえは誰だ?」「他にもまだ乗組員が……? いや、人間ではない」と、青く光るハーロックの眼。
なるほど……ハーロックの中にトチローがいるんですね。わかります。
旧アニメ版では、マゾーンがアルカディア号=トチローというのを見ぬいていましたが……。
さらに踏み込んで、ハーロックの中にトチローがいる、とこの外伝では語っているようです。
だから、ハーロックは揺るぎないのだ、と。
「去れ!」の一喝で精神世界から根源の恐怖を叩き出すキャプテン。
いやぁ、外伝ハーロックさんほんとメンタルお強い。
一方、死を覚悟するイリタ長官の回想。
あ、旧型アルカディア!マントなしハーロック!若い!細い!
うっかり見惚れそうな流麗な動きでイリタに銃をつきつける若ハーロックさん。これは死を覚悟をするよなぁ……。
そしてひとめぼれしたイリタ長官。アルカディア号の元クルーたちを逮捕して、人質として殺さずにいたのはハーロックをおびき寄せるためだった、という話もちょっと聞こえ方が変わってきますね。あの死に等しい恐怖をつきつけた黒衣の男にこそ再び逢いたかったんでしょう?
回想は終わり。アルカディア号に特攻をかけるイリタ。躊躇なく撃つハーロック。
外伝ハーロックは撃つんだよなぁ。ここで見逃したって救援はなく、小型艇の燃料では帰還も避難も困難で、緩慢に死にゆくしかない。アルカディア号の憐みを受けるような男でもない。そういう状況だったからこそ。そしてイリタの覚悟を認めたからこそ。罪や罰を恐れる無法者ではない、だからこそ。外伝ハーロックは撃つのでしょう。
「追憶の髑髏はやさしく嗤う」は、イリタの追憶だったんですね。髑髏はやさしかったのかい。
イリタを撃ち殺してすれ違うハーロックは微笑みを湛え剣礼を送っていた。
【7話】 約束の地に月は待つ
~あらすじ~
マスさんと魔地機関長がいる鉱山惑星に着陸したアルカディア号と乗組員。
街に出かけた正と螢は、ヌーの恐怖に屈してしもべに変えられた人々に襲われる。その群衆の中にドクターハッサンの姿を見つけた正は、父の仇を討とうと我を忘れて飛び出してしまう。返り討ちに遇いそうになった正を螢が庇う、その刹那、螢の身体を光が貫いた!~感想~
マスさん!
魔地機関長!
おなつかしや~~!!
あ、イリタさん生きてたw 生命維持装置つきの小型艇だったのか。装備優秀で助かったね。
ねじれた紐の末裔は語る。ヌーとは何者か。地球はどうなったのか。
むつかしい話に……というか、感情移入がしづらい話になってきたのぅ。
「武器を取り返して、ヌーを封印してください」と頼まれて、
「断る。宇宙がどうなろうと知ったこっちゃない」と返しちゃうハーロックw
他人のために、大義のために戦う男ではない。
あくまでも自分の胸の中にあるもののためだけに、ということなんでしょうか。
でも、結果的に外伝ハーロックは宇宙を救うんですよね。
昔も今も、「たまたま俺の眼の前にたちふさがったから倒す」なとこは変わらない。
突然進路を変えるアルカディア号。
「懐かしい仲間に、会いたくなったんだろう」
アルカディア号に向けてやさしく思いやり深く語りかけるキャプテン……なんでしょうか、色気がある。
鉱山の星に降りたって。
ハーロックについて「昔からああだったのか?」と蛍に尋ねる台羽。
ハーロックを理解できない(理解したがっている)台羽くんを微笑ましく見守る蛍。
そんな姉弟のようなふたりのデートもつかの間、台羽の軽率なふるまいのせいで蛍はヌーに撃たれてしまう。
外伝は台羽くんの成長を主軸に持って来ているなぁ。未熟さゆえのふるまいも多く、けれどそのぶん彼は成長する。
【8話】 死滅の星の魔城
~あらすじ~
ドクターハッサンに捕えられた正と魔地機関長。
ハッサンは地下から化け物を呼び寄せ、ハーロックを誘き寄せるまでの余興としてどちらかが死ぬまで殺し合えと強要する。言う事をきかなければ化け物の餌食にすると。仕方なく刃を交える二人!
しかし、その化け物は自分のせいで行方不明になっていたタケマツの成れの果てだった。愕然とする魔地。
一方その頃、螢は悪夢の中をさまよい続けていた…。~感想~
キャプテン!馬!?馬乗れんのか……!
(旧アニメでも乗ってたけど忘れてたので衝撃でしたw)
アルカディア号に語りかけるキャプテン。
「友よ、蛍が視線をさまよっている。俺にできることはないか……」「祈るしかない、か」
口元が映り、声に出しているのは「祈るしかない、か」だけ。前半は心の中で語りかけているのかも。
ヌーいわく、「我らがハーロックに不覚をとったのは、あの艦のせいだ」と。
舞台をアルカディア号の外に移せば、人間ひとりたやすく籠絡できる……とでも?
というわけで、台羽と魔地を人質にとられ、「ひとりで来い」と呼び出されるキャプテン。
乗馬キャプテンかっこよすぎて事態の深刻さを忘れそうになる……けど、急いであげてくださいw
CMにちらっと映る999のバーのマスターに笑ったw
細かいなぁw
一方。開拓船の母子に助けられたイリタ。
イリタと少年の関係から見えるのは、やはり「導く者」としてのハーロックとの相似でしょうか。
7話8話と魔地のキャラを丁寧に描いてくれるのは旧作ファンからすると嬉しいのだけど、話があんまし進んでない。
【9話】 友よ。魂の深き闇の果てに
~あらすじ~
正と魔地機関長を救出に来たハーロックは、精神世界でヌーの精神体と対峙する。真の姿を現し、恐怖によってハーロックの身体を乗っ取ろうとするヌー!
魔地機関長とマスさんが戻り、より活気に溢れるアルカディア号のクルーたち。ヤッタランも石盤の謎の核心に迫りつつあった。
だがその頃、人知れず目覚めた螢の手にはナイフが握られていた…。いったい螢の身に何が!~感想メモ~
ハーロックの姿を見た台羽と魔地が同時に「「キャプテン!」」と叫んで「「え?」」と顔を見合わせる。テンポの良さ楽しい。
ヌーに向かって「おまえたちのことなど、どうでもいい」「あの星が人類の故郷かどうかは関係ない。だが、俺にとって憎しみと希望の入り混じった場所……友と誓った約束のばしょだ。俺は、俺の宇宙に地球を取り戻す」「立ちはだかった者は倒す。それだけだ」
言い切るキャプテンのかっこよさよ!
マゾーンのときも途中までだいたいそんなノリだったよね!
敵から見たらはた迷惑この上ないとこはまさしく海賊だなーw
我々のキャプテンが名状しがたき冒涜的な化物に触手プレイされちゃう……!
キャプテンに、手が!手が……!キャプテンの体が奪われちゃう!蹂躙されちゃう!
エロ同人誌みたいに!エロ同人誌みたいに!
と、ニヤつくくらいには余裕があった対決でした。
ヌーの見せる精神世界。
「この乾いた空虚な空間は、おまえの心の闇だ。心に闇を持つ限り、我らが支配できぬ肉体はない」
だが、ハーロックは動じることなく銃をつきつける。
「まだわからないのか。どんな状況でも決して臆することのない男たちがいる。彼らがいる限り、俺も熱い魂を忘れはしない。それに、俺の心の中には、いつも友がいる……!」その言葉に応えるように、ひとりでに起動し唸りを上げるアルカディア号。
ここ、桜吹雪の幻影が見えるのがなぜか、一見ではよくわからなかった。
そこで、公式サイトのコラムは言う。
「ハーロックの荒涼とした心象風景の方が、より衝撃的であった。砂漠は感情の乾き、散る花びらは悲しみ・寂しさ・失望のメタファーである」と。ハーロックに寄り添い名残を惜しむように舞い散る桜は、美しくも悲しい。
この解釈が合っているのかどうかはともかく、ハーロックの心象風景のイメージとして舞い散る桜を描きこんだアニメスタッフ気持ちを推しはかりたい。ハーロックの経歴と桜は似つかわしくない。けれど、それでもあえて描きこんだ桜吹雪には相当の思い入れが込められているにちがいない。底知れない悲しみを抱えた男として、死に近しい者として、遠く儚く消え去った友との春を忘れぬ者として、ハーロックを描いている、のかも。
(追記:これ、旧アニメ版からの描写でしたわ! 旧アニメでは、ハーロックがトチローやまゆを思い浮かべるとき、その背景によく桜吹雪が描かれていたのでした。印象的なシーンだと「銀河子守唄」で、歌うアルカディア号に重なって浮かぶトチローのシルエットと一面の桜吹雪。さらに、地球のトチローの墓を覆うようにそびえる樹も、花も葉もなかったけど枝ぶりからするとたぶん桜。ハーロックの心象風景は荒涼とした砂漠(あるいはトチローの死んだヘビーメルダーか?)だけど、亡き友を思うときその心の闇に桜が舞い散るのです。なにを言っているのかわからんと思うが、私もスタッフがなにを思ってこんな25年越しのコズミック☆ラブロマンスを仕込んでいるのかわからない。わからないけど泣きそう。)
戦士の銃を魔地に渡して、「救ってやれ」というハーロック……。
外伝は繰り返し「殺す」ことで「救う」ものがあるとを伝えている。死の安寧を与えたり、魂の尊厳を守ったり。一話のラクダしかり、未遂ではあるがイリタしかり、この話のタケマツしかり。そして、言うまでもなく台羽博士も。化物に成り果てた部下を震える手で撃ち殺す魔地の姿を目に焼きつけた台羽は、後に父を殺したのが誰か知ったとき、その理由を悟ることができることでしょう。
いろいろあったけどマスさんと魔地機関長が合流。
やっぱり決戦の前には美味い飯がいる! 食べ物が男に力を与えるのだ、とトチローは信じていたからね~。
むずかしい宇宙物理学講和は水のように聞き流すことにして。
しかしヤッタランどこで学んだんだその知識は……能ある鷹にしても爪を隠し過ぎだw
「魂のおもむくままに行動すればいい。その魂に、誇りが持てるならな」
なにもかも自分で引き受ける覚悟。それが、誇りだと。
こんな言葉をハーロックから渡されると、また旧アニメを見たくなってくる……。
さて、クルーがそろったところで、気になっていたことひとつ。
こと外伝について言えば、アルカディア号の中にトチローの魂はいないんじゃないですか。
なに馬鹿なと言われるかもしれないが、りんたろう監督はわざとそう描いてるんじゃないのかなー。
たとえば、魔地の合流によって船速を上げたアルカディア号について、ミーメは「機関長はアルカディア号の次元流体動力エンジンを知り尽くしてるから」と説明する。けど、トチローが知り尽くしてないわけがないのだ。アルカディア号を作った本人なのだから。トチローの魂が操船するときが最速にならなきゃおかしい。
また、外伝で目立つヤッタランの博識っぷりもだけど、そんな彼でも「ねじれた紐」の石版は手におえない。これを完全に解読できるのは台羽博士かさもなくばトチローだけだと言う。もしトチローの魂がアルカディア号にあるのなら、石版のデータごとアルカディア号につっこんで解析してもらえばいいんだよ。原作でマゾーンの遺物を解析したように。でも、ハーロックはそうしない。
またちょっとわかりにくいけど、ミーメが監獄惑星をスキャンしたのも、同じ示唆かもしれない。
アルカディア号にスキャンかハッキングか、そういうことができるシステムがあるのなら、トチローがやってもいいんだから。
外伝のアルカディア号は、ハーロックの能力を超えることはしない。
亡き友は「心の中にいる」と言い切る。中枢コンピューターにいるとも、艦に宿っているとも、外伝のハーロックは言わない。
中枢コンピューターには死者の魂が宿っているわけではなく、アルカディアという戦艦はハーロックの意識(の中のトチロー)と繋がっている・・・と思えばいいのかな。その方が自然に見える。13話にもつながる話なのでまた続きはそっちで。
【10話】 蛍・幻想
~あらすじ~
ヌーの精神体にとり憑かれた螢は、アルカディア号の艦内を破壊しつつ、中枢大コンピューター室に向かう。螢の精神は時空の狭間を彷徨い、生前のヒルツ博士たちに出会っていたのだ。そこで語られる5年前の恐ろしい出来事…。
一方、螢がヌーにとり憑かれたのは、自分のせいだと己を責める正。螢を救うため、決意した正はヌーに向かって叫ぶ。
「その身体から出ていけ!とり憑くなら、俺の身体にとり憑いてみろ!」~感想~
ヌーは監視カメラを残しつつ蛍の体を人質にとる、という方法は考えなかったのかな?
というか、ケイの体こんなに動いて大丈夫だろうか……撃たれたばっかりなのに。
憑依蛍、武器庫から弾薬と銃を奪って登場。
アクションが派手になる!
機関室への扉を開けることによって罠を警戒させ、中枢大コンピューターへおびきよせる。
ハーロックが尋常ならざる敵だと認識している&アルカディア号内で依り代となる体を失うのが敵にとって致命的となることを逆手にとった作戦。それにしても外伝ハーロック移動速度がゆったりしすぎてハラハラする。はよ行ってやれw
「まさかキャプテンは、姉御を…」
憑依された蛍をキャプテンは殺すのかどうか。それしか選択肢がないのなら、「殺す」ことでしか「救う」ことができないのなら、ハーロックはアルカディアの艦長として、自分の手を血に濡らすんだろう。化物に成り果てたタケマツに魔地が止めを刺したように。
「キャプテン!」台羽は漆黒の背に向かって叫ぶ。
ふり返ったハーロックの眼!この無言の眼ほど恐ろしいものはない。だが、台羽にはすでに覚悟があった。これは自分の軽率な行動が引き起こした事態なのだ。だから、自分が責任をとらなくてはいけない。蛍を救うことを……あるいはもしそれしかないのなら殺すことを、ハーロックにゆだねてはいけない、と。ハーロックもまた台羽の覚悟をその顔に読み取って、肯いた。ほんとうの男ならば、行け、と。どれほどの哀しみであろうとつらさであろうと、男ならば自分の胸に引き受けろ、と。
「さぁ、俺の体にとりつけ!」
と自分の体を餌に蛍の体を取り戻そうとする台羽くん。
ヌーがとりつくにせよ、もうちょっと色っぽいやり方なかったのか……? 蛍に抱きしめてもらうとかさーw
「俺は、おまえなんかに……出て行け!」
おー、台羽くん精神力で勝った。中枢コンピューターが輝いて桜吹雪が散る幻影が見えた、ってことはアルカディア号(あるいはハーロック)の援護もあったのかな。なんなのかな。ともかく、自分の意志で、蛍のために、仲間の思いを背負って、恐怖に立ち向かった台羽正は男を見せました。
【11話】 震える宇宙
~あらすじ~
ヌーの最後の一人・ヒルツ教授が一騎討ちを申し出てきた。疑いつつも、決戦の場であるネオ・テラに向かうハーロックたち。
ヤッタランによって改造を施されたパルサーカノン砲が火を噴く!その船腹を吹き飛ばし、ファタ・モルガーナ号を追い詰めた時、ネオ・テラの超古代遺跡から巨大な火焔模様の物体が浮上する。
物体の発した禍々しい光に包まれ、操縦不能に陥ってしまうアルカディア号。
「キャプテン!中枢大コンピューターが、完全に停止しました!」~感想~
玉座に大きく脚を広げて座るハーロック好きです。
行儀悪いというよりも、足の長さ余らしてる感じがしてとてもいい。
敵から仕掛ける一騎打ち……って時間をロスさせるための罠、では? などと勘ぐってしまうなぁ。
意識のない蛍が彼岸で見た「少女・まゆ」は地球の記憶、だそうです……。
やっぱり、この世界には「まゆ」は存在しないんでしょうね。
旧アニメにおいて、「まゆ」とはハーロックが地球を守る理由であり、地球の未来の象徴でもありました。その娘が、時の輪を超えて地球のメッセージを伝える……。ほら、やっぱり78年アニメ見てないとわかんない話じゃないか!w
ああああ操舵キャプテンかっこいいですぅうううう(感涙)
アルカディアの方向転換とのタイミングもばっちりで臨場感がたまりません!
戦艦の移動をかっこよく見せるのってむつかしいよね、アルカディア号が巨大戦艦なだけあって。
わ、中枢大コンピュータが停止するってはじめてじゃない? あ、さよなら銀河鉄道でもあったか。あっちは自分でシャットダウンしてたけど。ここでハーロックが憤りを表情に現すのは、ハーロックとアルカディアの繋がりの深さゆえでしょうか。両手両足を縛られたような気分だろう……。手動操船に切り替えて、各自できることを考えてやれ、ってシンプル過ぎる指示でこの巨大艦隊がたった40人で動くんだからアルカディア号クルー優秀過ぎるよ。
イリタさん……無茶、しやがって。
若本さんはほんとこういうキャラで良い演技をなさる……。ギターのメロディがまた哀しげでシーンに合う。音楽は可もなく不可もなくかなぁ、と思っていたけれど、2度くらい見ると耳に馴染んできて良いですね。
ところでイリタさんここでアルカディア号の救援を優先する選択肢はなかったのかい。左翼がひっかかってるとこ撃ち崩すとか。
「無鉄砲なところは相変わらずだな」
「……覚えていて、くれたか」
ここでサンバイザーを外すイリタは……嬉しかったんだろう。
世界にたったひとりでも自分を理解してくれる相手がいるのならば、男として死に甲斐があるというもの。
「俺の命の後を追って来い」
追尾システムをふぁたもるがーなに埋め込むために、戦闘機ごとつっこんでゆく。
男、だな。若本だしな。そしてキャプテンハーロックは眼をそらさずに、その死を見届ける。
ハーロックもまたそういう男だ。だから、彼の心の中にはいつも桜が散り積もる
「左翼を爆破しろ」
アルカディア=トチロー=ハーロックにとって、己の腕を切り捨てるにも等しい、友を傷つけるにも等しい、決断だったろう。
だが、戦友の命を無駄にするわけにはいかない。
わぁぁぁああああい!!!!
三連パルサーカノンからのラム戦かっけぇええ!!!
ゆっくりと鎌首をもたげ、だが避けようもなく鋭く喰らいつく姿はまさしく深海の王者の迫力!アルカディアかっこいいよ!!!
「“禍々しきもの”は、論理回路を狂わせる。つまりはコンピューター文明がその存在の前提としてあるのだ。まさか巨大な刃物を振りかざした艦が、自ら突っ込んで来る(しかも手動だ!)という攻撃法は想定外だろう。」というノってるコラムを片手に、このカタルシス堪能して欲しい!
【12話】 さいはてに魂は流れる。別れに言葉もなく
~あらすじ~
アルカディア号が、中枢大コンピューターの停止という危機に見舞われる。巨大円筒兵器によって両翼をクレバスに挟まれ、絶体絶命の淵に立つアルカディア号。
一方イリタは自らの信念を貫くため、たった独りでファタ・モルガーナ号に向かって行く。その隙にアルカディア号は自ら翼を爆破してクレバスから脱出、巨大円筒兵器を破壊する。
「行こうか。…友よ」
すべての乗組員を降ろし、ファタ・モルガーナ号を追うハーロックとアルカディア号を、密度行列砲の光が襲う…。~感想~
ヌーの兵器を破壊してもなお起動しない中枢大コンピューター。
打つ手もなく困り果てる乗員たち。と、ハーロックが口を開く。
「船とふたりにしてくれ」
エロい……
「おまえたちも降りてくれ」
すごくエロい……
蛍「キャプテン、私……いえ、なんでもありません……」
美女の縋る眼差しをしりぞけて、アルカディア号と「ふたりっきり」になるハーロック。
いったい何が起こるのかとドキドキしました……////
「ゆこうか、友よ」
ここの字はきっと「逝」ですね。針路はあの世だしな!
ハーロックが舵輪にふれた途端になめらかに起動する中枢大コンピューター。
「寝たふり」しちゃうアルカディア号だったと。
クルーを置いて飛び立つ艦。それは死へ向かう旅路か。別れの言葉もなく。
艦内にハープの音色が流れる。
「ありがとう、ミーメ」
原作漫画のハーロックはよくミーメにこう言っていましたね。
ミーメの献身に対して、その命ごと引き受けて感謝するのがハーロック。
このふたりの関係もふしぎなものです。ありふれた恋愛でも主従でもない。
ミーメの種族はミーメを最後をひとりとして絶滅してしまうから、かな。ハーロックが彼女の命を引き受けるのは。
助けてしまった責任として、途絶えてしまう血筋の最後の一滴を受けとめるために、彼女のどんな生き様もハーロックは尊重し肯定する。
「この宇宙の中なら、たとえどこだろうと、俺は彼らと一緒に行っただろう。だが、これから行くところは宇宙の果てた。そこまで彼らにつきあわせるわけにはいかない」
ハーロックは艦と共にどこへでも行けるし、ミーメもハーロックの傍らならばそれが地獄の果てでも一緒に行く。だが、他のクルーを地獄へ連れて行きはしない、と。アルカディア号のクル―はハーロックの家族であると同時に、彼にとっては息子であり娘である、と思う。蛍や台羽くんなんかまさしくね。だからあの世までは連れてゆかない。あぁ、テレビアニメ版のエンディングを思い出すじゃないか……! やっぱり旧アニメのエンディングは、死出の旅だったんだろうな……。
さて。残ってる台羽くんだけど、なぜ残る決断をした?彼はハーロックの言葉を疑う要素も、他のクルーの行動に逆らって自分だけ残る理由もないはず。自分の意志で?それとも誰か引き止めた?台羽博士の死の真実を見せるために……?
【13話】 …涯
~感想~
台羽親子の語らいから。
「おまえの心残りと、おまえの行く末を案じる私の心が引き合ったのだよ。私は死の瞬間の私だよ」
ヌーの精神体があざわらう亜空間。言葉にするならば、地獄。どこか、ラフレシアとの最後の戦の場所のようでもある。
髑髏の旗と卵のような庵。うむ、この汚い部屋はトチローにちがいないw 亜空間の地獄から、地球の記憶がオカリナを吹く世界へ抜ける。
「やぁ」
「トチロー」
ちょっと何日かぶり、というくらい短い言葉を交わすだけの出会い。
でも、でも、ハーロックの声からにじむ喜色を聞き逃すわけがない!
トチロー!
すごいなトチロー!
ありあわせの機械で地球にむらがるヌーの精神体をしりぞけたぞ!?
会話を聞いてると、地球が現れてからこっちは500時間も経ってないのかもしれない、と。時間の流れがあるような、ないような世界だしなー。地球が光速に近い速度で飛んでいるのなら、ウラシマ効果が発生しているかも。
「よく来たな……とは、言いたくないぞハーロック!」
たしなめるトチローに、嬉しそうなハーロックの微笑……。
「無茶がすぎるぞ、ハーロック。俺に逢えなかったらどーするつもりだったんだ」
「ここが魂のおもむく世界なら、そんなことはありえんだろ?」
そんなふうに互いを想う絆の強固さを見せつけて視聴者を悶絶させないでください!
なんだかね、トチローがハーロックを心配してる状況が新鮮で、涙が浮かんでくる……。
どちらかと言えば、無茶したり周りが見えなくなって痛い目見たりたりするのはトチローの方だったと思うんです。それを引き留めたり助けに行ったりするのが、ハーロックだったと思うんです。ガンフロンティアとか見てると、たぶん。でも、それは二人そろってる時の役割分担で、ひとりで生きるハーロックは無茶も無謀もするようになる。それが最善の策であると判断すれば、地獄まで会いに来ることだってしてしまう。生きてるからこそ命知らずになれる。
「大山式密度行列砲だ♪」
このトチローさんの天才っぷりよ……それでこそザ・トチロー。
くっそ、帽子の上からのぞきこむハーロックかわいすぎんだろ!
トチローがいるだけで、表情のバリエーション増量しすぎだよキャプテン!かわいいな!
このふたりが、りんたろうアニメで並んでいるだけで心臓に悪いくらい嬉しいので2時間くらいこの世界映しといてほしいのですが……!!
ここの短い会話でも、アルカディア号とトチローの魂が別物として描かれているんじゃないかと疑ってしまう。
ハーロックが単身亜空間へ飛び込むために積極的に協力したアルカディア号と、「無茶しやがって」と諌めるトチローはやはり別人格なんじゃないでしょーか。そして、アルカディア号では作れなかった密度行列砲を、あっさりと完成させるトチロー。やっぱりさー、あの艦に宿るのがなんにせよ、トチローそのものではないよね。劇場版999以来、私たちが受け入れてきたしゃべって動ける「艦の魂」とは、ちがうものだ。
トチ「本当は酒でも飲みながら、ひと晩語り明かしたいところだが、そんな時間はないようだな」
ハロ「いずれそんな時も来るだろう」
トチ「いや、そんな時は来ないほうがいい。そう願っているよ」
ここのやりとりも、どうもトチローの言葉とは思えない。
ハーロックは死んだら会おうって言ってるのに、トチローは「気長に待ってるさ」とか「のんびり来いよ」とかじゃないんだよ。ハーロックに長く生きてほしいに留まらず、「永遠に死ぬな」と言っているように聞こえる。ハーロックが生き続けることを、願っていると。
このトチローの台詞って、トチローの口を借りた御大の願いじゃないかな。旧アニメ版のエンディングは、ハーロックを死なせる予定だったとりんたろう監督は言っていた。ついでにリブート映画のエンディングも、本当はハーロックが死ぬはずだった、と聞いたことがある。それを松本御大が絶対だめだと許可しなかったから、旧アニメはクルーを全員置いてハーロックだけが地球を旅立つエンディングになり、リブート映画はヤマとハーロックがふたりとも生き残ってしまったんだ、と。リブート映画の監督は「鶴の一声だからしかたがない」と苦々しく語っていたね。物語の整合性がどうであれ、ハーロックを死なせたくなかった御大は、古い親友であり、自分の筆が生み出した息子でもある宇宙海賊を、ほんとうに愛していらっしゃるんだとしみじみ感じたものでした。古いハーロックファンのひとりとして見れば、あの映画はつらいシーンもあったけれど、御大にとってはどんなハーロックあれ生きて動いているだけで、嬉しいのかもしれない。
本編に戻ると、
宇宙理論の小難しいはなしはそれはそれとして、ド迫力の艦隊戦闘シーン!大好きだ!!
ラム突で粉々に砕け散るふぁたもるがーな!あの恐ろしい幽霊船のような艦を一撃の元に、粉砕!轟沈!!
かっこいいよかっこいいよアルカディアぁああああ!!!
が、ここですんなりハッピーエンドにするようなりんたろう監督ではなかった。
艦橋にはハーロックと台羽正。
父の死の真相を、宇宙の色の背にに問いかける台羽。
「どうして……いや、わかってるんだ」
そうだね。13話かけて、台羽くんにはわかるようになったはずだ。
松本ワールドにおいて、戦士の銃を渡すことがどういう意味を重さを持っているか、私たちは知っている。
78年版アニメは、ハーロックから台羽正に戦士の銃を渡せなかったことだけを悔やんでいたのかもしれない。
空気をはらんで翻る黒いマント、隻眼になびく髪、鮮やかに射抜く眼差し、つきつけられた重力サーベル、艦橋スクリーンに大きく映るネオ・テラ……この非の打ちどころのない対峙は、もう言葉にならない……。
ありがとう、アニメスタッフありがとう……。
エンディング。都市へ向かって歩いていく台羽。地表近くを飛ぶアルカディア号。
その甲板には40人のクルーの姿が、ハーロックの姿が、トチローとまゆの姿が。
なんで生き返ってるのかとか、結局撃たなかったのかとか、そんなことを言い立てるのは野暮というもの。
台羽正がハーロックとアルカディア号のクル―から受け継いだ血筋を、自由の信念を、胸の中に灯る炎を、映像に現すのならばそうなったんだろう、と思って見た。彼の心の中の宇宙には、今もアルカディア号がドクロの旗をひるがえして飛んでいる。そしてまた、この作品を見た私たちの心の中にもアルカディア号は飛んでいる。
追記:旧アニメのエンディングについて、りんたろう監督は「白鯨をイメージしていた」と言っていた。これは、アニメにならなかった当初のエンディングについて、だ。白鯨の結末は、白鯨によって船は壊れて沈み、艦長・エイハブもクルーもみんな沈んで、ただひとり新入りにして語り部のイシュメールだけが生き残り陸へ帰る。たしかめようもないので推測になるが、当初のエンディングは「マゾーンを打ち払うが、アルカディア号もろともハーロックは死んで台羽正だけが地球へ帰還する」というものだったのではないだろうか。外伝の、艦を降りてひとりでネオ・テラへ歩いていく台羽の姿にも重なる。
追追記:外伝ハーロックの歩き方について。いわゆる「ハーロック歩き」ですね、アオイホノオで有名になってしまったやつだw ハーロックが上体を揺らして歩くのは劇場版999から。78年アニメでは揺れません。これについて、ソース未確認ながら「足に傷をもっているためにそういう歩き方になる」という話があります。白鯨のエイハブ船長もまた、白鯨に足を食われたために義足を嵌めている男でした。失った足と鯨骨の義足こそがエイハブを海へ駆り立てる元凶と言っていい重要事項。りんたろう監督は、ハーロックをエイハブ船長に重ねていた?外伝そのものを白鯨に重ねていた? 仮にそうだったとしても、足の傷設定が劇場版999からの構想なのか、この外伝からの設定なのかは不明。また、白鯨という物語自体が神話のような哲学書のようなシェイクスピアの戯曲のような、私の人生経験ではとても太刀打ちできない世界で、どういう意図の演出なのか推し量るのも難しい。(白鯨は単なる捕鯨うんちくエンタメと読んでも十分おもしろかったです)
わかんないだらけだ。今後の宿題です。万が一、りんたろう監督に質問するチャンスがあったら、噂の真偽をたしかめたいものです。